テレビやアイドルが好き、と同じくらい「勉強が好き」という生徒には出会ったことはありません。高校や大学に進学したいから「仕方なく」している、大半の生徒さんに当てはまるのではないでしょうか。
では、勉強の何が嫌いかを、考えたことはありますか?
漢字を書くのが面倒くさい、全く何をして良いかわからない、今は勉強をする気分では無い、単語は覚えてもすぐ忘れるからやりたく無い…。
生徒が100人いれば100通りの答えがあります。さらに今日の答えと明日の答えも、体調や気分で変わることもあるでしょう。漠然としてしたまま、なんとなく嫌いという状態の人も多いのではないでしょうか。「自分」は何が嫌いなのか、何を嫌いになる傾向があるのか、もう少し丁寧に考えてはみませんか?
勉強といってもいろいろあります。たくさんの教科がありますし、数学の中にもいろんな分野(計算、関数、図形など)があります。例えば、数学が嫌いな場合、具体的に数学の何が嫌いなのか考えましょう。計算なら大丈夫、図形は証明が苦手、文章題は読むのが難しい…こちらも100通りの答えがあります。そして、自分が苦手→嫌いなのか、面倒→嫌いなのか、点数が取れない→嫌いなのか、具体的に「何が嫌い」なのか考えてみましょう。
得意教科であっても、好きなこと、嫌いなことはあるでしょう。私自身は、国語は好きでしたが、作文や鑑賞文を書くようなことは苦手でした。テストとなると、長文を読むのは好きだったので速く問題文を読みすすめることはできましたが、いざ解答する時に「当てはまらないものを選ぶ」を「当てはまるものを選ぶ」と勘違いして答えてしまい、「好き」という気持ちが点数に比例しないことが多くありました。
「嫌い」という言葉は恐い言葉で、その一言で、先に進めなくなってしまうこともありますが、「嫌い」に蓋をしてしまわず見つめ直すことで、自分の武器を探すため活用することもできます。次のステップとして大切なのは、「特性」を見つけることです。
例えば勉強で言えば、
コツコツやるのか ⇔ 一気に仕上げたいのか
書いて覚えたい ⇔ 読んで覚えたい
暗記型 ⇔ 思考型
などのように、具体的な特性(行動傾向、思考傾向など)に着目しましょう。繰り返しになりますが、「好き」「嫌い」ではなく、自分に当てはまる「特性」を探していくことが大切です。「好き」だけでは偏りができますし、「嫌い」では長続きしないのです。そして、「特性」を掴むことで、その生徒さんの「得意なこと」を見つける手がかりとなります。「特性」には必ず対局がありますので、より得意なことに気づきやすいはずです。
例えば、英語が嫌い、特に英単語の暗記が苦手な場合でも、机に向かって長い時間繰り返し書くことは嫌がっても、長文を読むことが、比較的取り組みやすいのであれば、そちらからアプローチした方が効率的でしょう。数学が嫌いという生徒さんでも、計算問題は黙々と練習できる生徒さんもいれば、初めて見る難しい問題のほうがより集中力を増す生徒さんももいます。自分の「特性」「得意なこと」を生かした勉強方法を探すことが、何よりも大切ですし、我々教師も指導に当たる際に一番大切にしている部分といえます。
話は飛躍しますが、自分の「特性」「得意なこと」を知ることは、将来の職業選択のときにも役立ちます。「好きなこと」=「得意なこと」は必ずしも一致するとは限りません。「好きなこと」を見つけるのは難しくても、「得意なこと」や「苦手なこと」を選んでいくのは比較的取り組みやすいと思います。「好きなこと」は日々変わっても、「得意なこと」は、そう簡単には変わりません。どうしてもやりたいことがない場合に、「自分には向いていそうだな」という切り口で進路を考えると、意外と受け入れやすい場合があります。
「勉強嫌い」の生徒さんに「嫌いを見つめよう!」といきなり言ってもはじめは難しいと思います。小学生、中学生はもちろん、高校生であっても、難易度は高いと思います。是非、保護者さんには「勉強をしなさい」という言葉だけでなく、どういった「特性」「得意」を持っているかを一緒に探してみて欲しいと思います。向いているか、向いていないかは、実際に取り組んでみなければわからないことが多いので、すぐに答えは見つからないかもしれません。それでも、自分らしい勉強方法を、色々試してみながら探してみては、いかがでしょうか?